子ども家庭支援におけるICTの重要性と喫緊の課題解決への貢献

ナナイロこども家庭研究所 所長 芝野松次郎

今日本では、「こどもまんなか社会」の実現を目指し、さまざまな取り組みが展開されています。都道府県レベルでは、児童相談所の質向上を図る取り組みが行われており、市区町村レベルでは、子ども家庭総合支援拠点と母子健康包括支援センターを統合して、こども家庭センターを設置するなど、重要な改革が進行中です。このような背景の中で、専門職や事務職の方々が行う複雑な業務を効率化し、援助の質を向上させるためにICTの活用が重要な課題となっています。

児童相談所や子ども家庭総合支援拠点など、利用者に直接援助を提供する専門職(例:児童福祉司や保育士など)は、多くの利用者を担当しており、その負担が増大しています。増員や給与改善の取り組みが行われていますが、現場のこうした厳しい状況は援助の質に影響を及ぼす可能性が高いと考えられています。

児童相談所や児童福祉施設などでの援助において、まず最初に子どもや保護者の抱える問題を丁寧に聴き出し、整理し、的確に把握すること、すなわちアセスメントが非常に重要です。このアセスメントは、問題の把握だけでなく、利用者の良い点や可能性を理解する役割も果たします。これらの良い点や可能性をアセットと呼んでいます。アセスメントを利用者と協力して共同作業とすることで援助に役立つアセットが引き出されると考えられます。

しかし、専門職が多くの利用者を担当する状況では、丁寧で正確なアセスメントが難しくなります。不十分または正確でないアセスメントに基づく援助方針は、利用者の問題解決に悪影響を及ぼす可能性を高めます。

一人の専門職が担いきれないほどの業務量になれば、アセスメント情報を複数の専門職で共有し、援助方針の妥当性を検討することが難しくなり、援助が適切に実行されていないケースを見落とす可能性も高まります。このような状況で、電子化されたアセスメントシステムを活用したICTの導入は、経験の浅い専門職もエキスパートも同様に的確な援助方針を立て実施できるようサポートし、負担を軽減し、利用者にとって信頼性の高い援助を提供する手助けとなるでしょう。さらに、電子化されたアセスメント結果や援助方針はデータとして可視化され、専門職や管理者が閲覧、検証し、助言することが可能です。情報をデータベース化すれば、問題に対処するための戦略をより広範に検討することもできます。またそこに、AI活用の可能性も出てきます。

ナナイロの子ども家庭支援研究所では、こうしたICTシステムを開発し支援の品質向上を目指して研究を行っています。

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